先日、ある会社の取締役がご相談に来られ、その中で次の様な質問がありました。それは「うちの会社の企業理念をどう思われますか」といった内容です。私は、「企業理念から導かれる行動指針を見せていただけますか」とお願いしたところ、「そういったものはまだ作っていない」との回答でした。「それでは、内部通報制度の運用状況はどうなっていますか」と質問したところ、「総務にもうけた窓口にはこの1年間で1件も通報はありません」との回答でした。

実は中小企業から大企業まで、企業理念を掲げただけで終わってしまっている会社は非常に多いのです。自社のパンフレットに掲載したり、オフィスに掲示したりしているだけの会社がほとんどです。さらに、ほとんどの会社の内部通報制度は、形を整えただけで全く機能していません。

今回の助言は、超優良企業の企業理念と内部通報制度の仕組みを紹介します。超優良企業と呼ばれる会社は必ずと言ってよいほど、企業理念が組織の人々の実際の行動に結びつくようにさまざまな仕掛けを講じています。

1つ目:企業理念3要素(誠実さ、挑戦心、社会貢献)を短い文言に織り込む。
「誠実さ」は不正防止、「挑戦心」は競争力維持・強化、「社会貢献」は社会に必要な会社になること、を含意しています。

2つ目:企業理念3要素から行動指針・行動規範を導く。
たとえば、3要素の一つ「誠実さ」から、①顧客を欺かない②会社を欺かない③自分を欺かない、という行動指針・行動規範を導き、不正行為防止の原則を示します。

3つ目:企業理念に共感してもらうために継続的な努力を惜しまない。
たとえば、次のような施策を挙げることができます。
①創業者の成功への苦難の道のりを企業理念の誕生とリンクさせストーリーにする(人はストーリーに共感しやすい)
②創業者・経営者の経営理念・哲学を書籍にして出版する(経営者の理念を一般に公開することで、共感が得やすくなる)
③行動指針・クレド(信条)などを小冊子にして、すべての従業員が携行できるようにする(常に目に触れる状態を作ることで、脳裏に焼きつくようにする)
④定期的に企業理念の研修を実施する(入社時、昇進時の必修研修などを課すことで、随時、企業理念の重要性を認識させる)など

このような施策を通して企業理念を浸透させるための努力を怠りません。

4つ目:企業理念・行動指針違反を吸い上げるための「内部通報制度」を重要視する。
超優良企業は内部通報制度を不正防止のために徹底的に活用しています。そのために、行動指針においては内部通報することを積極的に仕向ける文言が掲げられています。具体的には、次の様な文言が掲げられます。
①行動指針違反は解雇を含む懲戒処分の対象となる
②行動指針違反を見つけたら必ず通報する
③匿名であっても通報者を徹底的に守る
④通報者に対する不利な取扱いを固く禁じる
⑤24時間いつでも通報できる窓口がある(参考:世界最大の日用消費財メーカーであるP&Gでは、ヘルプライン(いわゆる内部通報制度)を独立した会社で運用しており、年中無休で1日24時間いつでも匿名で利用できる)

このように、1~4つ目までが、一体となって機能しているからこそ、組織の人々の実際の行動に結びついていくのです。

(今回の助言のまとめ)

超優良企業と呼ばれる会社の企業理念・行動指針・内部通報制度は、一体のシステムとして機能している。

あなたの会社には行動指針・行動規範がありますか?そして、内部通報制度は機能していますか?

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